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「あー、市ヶ谷くん」


靴箱前。

ばったりと出くわした樹里と美月に挨拶をしたら、なぜか樹里が楽しそうに彗を見た。


なんで?

と戸惑っていると、淡々と口を開いた彗。


「なに、小林さん」

「え、やば。あたしの名前覚えてくれてる!」


返事が響くや否や、樹里が興奮した様子で美月の腕を叩いた。

そんなに驚くこと?

なんて違う意味でその様子に驚いてしまう中、いきなりぺこりと頭を下げた二人は、にんまりと満面の笑みを見せた。


「市ヶ谷くん、うちのみなみがお世話になってます〜」

「末永くみなみちゃんをよろしくお願いします〜」


……これは、なんのやり取り?

彗も満更でもない顔で「こちらこそ」とか答えてるし。