『彼氏がいるんです』


そう──先輩に嘘をついてしまったことから始まった、私と彗との秘密の関係。


本物の恋人同士に見えないって言われて焦って、いろいろと試行錯誤して。

結局、私のことは好きなキャラと重ねて見てただけだってわかって、複雑な気持ちになったのが懐かしい。


……でも。

今振り返ると、井出先輩がいなかったら彗と今こんな関係にはなれていなかったかもしれない。

あの時は本気でどうしようって悩んだけれど。

幼なじみから抜け出すきっかけをくれたのは、他の誰でもない、先輩なんだよね。


「ふふっ」


何はともあれ、感謝しないとね。


「なにやってんの?」

「あ、ううん」


〝ありがとう〟

とその背中を見送って、私はまた歩みを進めた。