『わかってくれました?』


じっと見てしまっていると、促すように言った彗。

井出先輩はどういうわけか、にやりと口角を上げてそこに近づいた。


『お前、市ヶ谷彗だろ?』

『……だったらなに』


えっ。

先輩、彗のこと知ってるんだ。


「へぇモテ男くんが、本命ねぇ」


不思議に思っていたら、腕を組んだ彼がそんな声を落とした。


……たしかに彗、目立つもんなぁ。

なんて、納得してしまう私。


『……何が言いたいんすか』

『別にぃ? ……ただ』


……ただ?



『本当に付き合ってるようには全然見えないって思っただけ』

『……っ』


全てを見透かしたかのような目に、身体が跳ねた。

瞬間、ドクン、ドクンと、鈍い音が全身に響き渡る。


『……ま、みなみちゃんまた来るからね。よろしく〜』

『えっ──』


そんな……。

うそでしょ!?