「いいよ」

「……ほら、早く」

「うん……」


促されるようにして、私はその背中に身を任せた。



「ごめんねー、私のせいで。せっかくのお祭りだったのに」


彗におぶられながら、暗くなった帰り道を進む。


よかったのは、彗が前を向いてくれてることだ。

そうじゃなかったら私、酷い顔見られてた。


「重かったら、おろしていいよ」

「いや……気づかなかった俺が悪いし」


なにそれ。


「優しいね、彗は」


こうやっておんぶされると、背中の大きさをひしひしと感じる。

その温かさも、全部。


言葉は少ないけど、いつも私のことを想っててくれて。

言わなくても、わかってくれて。



──そうだ。


キュッとその浴衣を握りしめ、顔を埋める。


──言わなきゃ。


覚えてなくてもいい。思い出してくれるのなら。

あの場所に、行きたいって──。



「……みなみ、覚えてる?」

「えっ?」


急に掛けられた声につられて顔を上げる。

すると、そこには──。