「へへっ」


……え?

なっ、なななっ。


目の前で起こった一瞬の出来事に、私の思考は停止した。


今、彗のほっぺに……。


「じゃあねー!」


得意げに笑った凛ちゃんは、お母さんに手を引かれながら遠くに見えなくなった。



「つ、次どこ行く?」


……私は大人。

あれくらい、スルーしなきゃ。うん。

ぐっと喉まで出かかった感情を呑み込んだ私は、切り替えるように彗に振った。


すると、ほんのりニヤッと笑った顔が目に映って。


「……嫉妬しちゃった?」

「えっ、そんなこと」

「ふーん」


な、なにその顔……!

なんかすっごく悔しい。


「正直に言ったらいいものやったのに」

「別に、違うし」


こんな時に負けず嫌い精神が働いて、ふいっと顔を隠すように下を向く。


「それより、早く次──」

「やっぱ……」


え──。