「って、笑わないでよ!」


どういう心境なのか。

咄嗟に横を見たら、フッと含み笑いをする意地悪な顔と出くわして全身がかっと熱を帯びる。


「私はただ、子どもだからまだ結婚なんて出来ないなーって、そう思っただけで……」

「子どもじゃない。(りん)よ。あと10年したら結婚くらいできるんだから」

「っ、そ、そうね」


落ちつけ。落ち着くのよ、私。

これは小さい子の言ってること。そのうち気だって変わるはず……。


「言っとくけど凜、ものすごく一途だから」

「うっ」


もしやこの子、エスパーですか?

ええい、こうなったら!


「凛ちゃん、一緒にお母さん捜そっか」


私は、切り替えるように満面の笑顔で手を差し出した。


「……」


……え?

あの。


「ねぇねぇ、すい〜凛のどかわいたー」


うぅぅ〜。


「飲み物買いに行くか」

「やったー!」

「その代わり、みなみと……このお姉さんと仲良くすること」

「はーい」

「偉いな」


彗がぽんぽんと頭を撫でると、凛ちゃんの目がチラッとこっちを見た。

ぎゅっ。


「……っ」


かっ、かわいい……!

握ってきた小さな手に、さっきまでの感情なんて一瞬で吹き飛んでしまった。