「お母さんとはぐれたの?」


女の子の前にしゃがんだ彗は、優しく問いかける。

程なくして、その子はゆっくりと顔を上げた。

……のは、よかったんだけど。


何やら様子がおかしい。

何故かポカンと呆けたような顔で、固まっているんだ。


……なんか、ものすごく嫌な予感。


胸騒ぎがしながらも見守っていると、ついにその口は動き。


「王子さま……」


へ?


「凜と、けっこんしてください!」


女の子は目をハートにしながら、ガシッと彗の手を掴んだ。

あまりの衝撃事態に、脳は混乱状態になる。


「ちょ、彗は私と──やっ、そうじゃなくて」


やだ私ってば、これじゃあまるで……。