「彗、大好き〜!」


ぎゅーっと抱きついたら、ほんの少し不機嫌そうな目がこっちを見てきた。


「なら、あんま触らせんなよ」

「? それってさっきの……?」

「千也だけじゃねえ。大志とか……他のやつにも」

「……う、うんっ」


答えながら、ゴクリと喉を鳴らす。


なんか、意外。

彗ってそんなこと気にする人だったんだ〜……って。


「待ってよ。彗だって、いつも女の子にベタベタされてるじゃん」


思い出した。私が何回も何回も我慢してきたこと。

休み時間とか体育祭の練習の時だってたくさん見たのに、不公平じゃないですかと抗議する。


「……俺は別に」

「いやだ。彗に触れるのは私だけがいい。他の人はダメ。彗は私の彼氏……だもん」


言い終えてから、我ながら少し恥ずかしいことを言ってしまったことに気づいた。


うわぁ、お願いだからスルーして!

だけどそんな願いも虚しく、はぁ〜っと長いため息が耳を突き刺した。


「あのさあ、あんま可愛いこと言うのやめてくんない?」

「か、かわっ?」