「なんでいるの」


セットから一直線に歩いてきた彼に、どういうわけか掴まれた腕。


さて、彗にバレないうちにあいさつを済ませて帰らなきゃ。

そう思った時にはもう、遅かったらしい。


「い、いつから気づいて……」

「初めからだよ。んな怪しい格好のやつ、目立つに決まってんだろ」


ちらりと見上げながら答えた私に、彗はあからさまに嫌な顔をした。

すると、ぽんと後ろから両肩に誰かの手が乗って。


「まーまー、いーじゃん。愛しの可愛い彼女に会えてお前も嬉しいくせに〜」


私の背後からひょっこり顔を出し、そう言ったのは五代くん。

そんな彼を、怒気を含んだ鋭い目が睨んだ。


「千也。教えるなって言ったよな」

「んー? なんの話?」

「つーか触んな」

「……ひゃっ」


いきなり腰を引き寄せられ、身体が硬直した。

彗……?