──それは、1時間ほど前のこと。



『この人が私の彼氏ですっ!』


ドキドキと脈打つ身体で、勢いよく解き放つ。


震える手足に唇。

緊張の中見つめる先は、


〝なら、今度その彼氏紹介してよ。そしたら、諦めるから〟


そう言っていた、井手先輩。


井出先輩は野球のキャプテンをしていて、さっきまで朝練をしていたみたい。

終わったその後私のクラスまでやってきたということは──目的は明快だった。


すぐに空き教室まで彗を引き連れていき。

……そして今、

私は井出先輩との約束を果たすため、彼氏()を紹介した……わけだけど。