慌てて帽子とサングラスをつけ直し、振り向いたその先。
奥の扉から現れた姿に、私は目を見開いて釘付けになってしまった。
というのも。
目に映ったのが、私の想像してた普段の彗と全く違っていたから。
……うそでしょう?
途端にドキドキと心臓がうるさく鳴り始める。
こんなの反則。
だってそんな、〝浴衣姿〟で出てくるなんて聞いてないよ!
淡い黒の浴衣にグレーの帯。
大人っぽいデザインのそれがクールな彗にめちゃめちゃ似合ってる。
その上、いつもは隠れてるおデコが全開なんて……!
はっとその時、一つの考えにいきついた。
さっきまでは全くもって選択肢にすらなかったことだけど。
「ま、まさか、彗のバイトって……」
ゆっくりと顔を動かし訊ねる。
すると、五代くんがにやっと口角を上げた。