「彗は、言ってくれないの……?」


そんな上目遣いに見つめられても。


「言ったじゃん」


ずっと前から好きだって。


いつから、とかそんなんはっきり覚えてもない。

でも強いて言うなら、昔3人でやったごっこ遊びで〝王子様〟に選ばれなかった時。

みなみじゃなく選ばれた宙にムカついてる自分がいて、そうなんだと悟った。


なんで俺じゃねえの?

……なんて思うのは、絶対に──。



「だから、そうじゃなくて」

「ん?」

「もう、意地悪しないでよ!」


とぼけたように首を捻ると、みなみは耳まで真っ赤にして涙目で睨んできた。

俺は堪らず、くすりと笑い。


「ごめんって」


そう言って、頭をぽんぽんと撫でてやる。


わかってる。

もちろん、お望み通りちゃんと言うよ。



「……好きだよ、みなみ。めちゃくちゃ好き」


10年分の想いを込めて囁いたら、目の前の笑顔が刹那に煌めいた。



絶対離してやんないから。

これからたっぷり、10年くらいすぐにでも埋めてやろう。