「ねぇ、なんでそう思ったの?」 

「……」

「ねぇ」

「うるせぇ」

「私が言ってること、間違ってないよね?」


そう、ぎゅっと抱きついた腕に更に力を込めた時だった。


──キーンコーンカーンコーン。


え、もうそんな時間!?


「ほら、戻るぞ」

「へっ」


大きく鳴り響いたその音に気を取られているうちに、私の腕から抜け出した彗が来た道を引き返し始めていた。


「ちょっ! 予鈴に助けられたとか思ってないよね?!」

「遅刻してーの?」

「っ……もう、彗〜っ!」


──結局、うまいこと逃げられちゃって、真相を聞き出すことはできなかった。

だけど。


「ねぇ彗。今日、一緒に帰れる?」

「……ああ」

「ほんと? やったー!」


今日からはじまる、新しい彗との関係は確かなものだもんね。

これからは、偽物じゃなくて、

本物の恋人同士。


ふふふっ。

まだ夢の中にいるみたい。

はぁ……嬉しすぎてニヤニヤが止まらないよ〜。


そうやって、全身に溢れる幸福感にうっとりとしながら、本鈴1分半前の教室に足を踏み入れた、その瞬間。