役決めが終わった後、私は食い入るように彗に尋ねた。


『ねぇ、なんでわかったの? 私がシンデレラになりたいって』


そしたら彗は当たり前のように言ったんだ。


『この前言ってただろ、お姫様に憧れてるんだって』


……そっか。

私が言ったこと、覚えててくれたんだ。



『彗、ありがとう……!』


嬉しかった。

涙が滲むほど、幸せを感じた。


なのに彗は、ちっともわかってないみたい。


『俺はなんもしてねぇ。つか、結局俺と同じただの村人役じゃん』

『うん、でもいいの。彗と一緒嬉しいし』


……それに。


『いつかちゃんと、お姫様になるから!』

『なんだよそれ』

『えへへ』


……そう。

その日から私の夢は、変わったんだ。


〝お姫様になること〟じゃなく、

〝彗のお姫様になること〟に。


彗はいつもクールで何を考えてるのかわからない。

冷たい時もあるけど、私は知ってる。

本当はちゃんと周りのことを見てくれる、優しい人なんだって。