『……っ』


手を挙げることが出来なかった。


あんなに憧れていたのに、なりたかったのに。

急に恥ずかしさが全身を埋めて、出しかけた手を下ろしてしまったんだ。


『これで以上かな〜?』


と、先生が呼びかけたその時。



『先生、みなみもやりたいって』


それは、隣にいた彗の声だった。

彗はそう言って、私の手を支えるように上げる。


『な?』

『そうなの、みなみちゃん?』

『……うん』


驚きを隠せないまま、私は小さく頷いた。


結果、ジャンケンには負けてお姫様になることはできなかった。

でもよかった。

それよりももっと、大切なことに気づけたから。