まりやさん?

……って多分女の人、だよね。


聞いたことのない名前。

誰なんだろう。



少しして、彗が戻ってきた。


「おかえり」


目が合ったのは、いつものすました顔。

……何もなかったかのような顔だった。


だからこそ、私は不安になる。

もしかして電話の相手、あの噂の人だったりする……?



「あのっ、さっきの電話……女の人?」


違うよって否定してほしくて、勢い任せに放ってしまった。

もう後戻りはできない。


だけど──。


「別に。みなみには関係ない」


返ってきた声は冷たくて。


「なんで、そんなこと……言うの?」


声が、小刻みに震える。


「……さっきの相手、やっぱり彗の好きな人だった?」


だから、言えないの?

ぽつりと呟くように私が言うと、彗の表情が明らかに強ばった。