……やっぱり、無理だよ。


彗の特別は私がいい。

彗の隣は私じゃなきゃ嫌。

そんな図々しいことを当たり前のように求めてしまってる。


「どうしよう、宙くん。彗に好きな人……いるかもしれない」

「それは……本人から聞いたの?」

「……っ」


ううん、と首を小さく振る。

すると私の頭に手を置いた宙くんが覗き込むようにして視線を合わせた。


「なら、自信なくすことなんてないよ」


柔らかな声が私の全身を強く打ち付けた。


『本人から聞いたの?』


そう、よね。


「……ありがとう、宙くん」


待ってるだけのお姫様なんて、今どき格好悪いよね。

王子様のお姫様になりたいなら、お城の中でただひっそりと迎えを待ってるだけじゃいけない。

自ら剣を持って敵に向かうくらいの、強い意志がなくちゃ。


そんな簡単なことに今気づくなんて。


「宙くんにはほんと、助けられてばっかりだね……」


もう溢れてこなくなった涙を拭い取り、笑いかける。