「どうかした?」

「わっ!」


いきなり視界に飛び込んできた顔に、声を大きくしてしまった。


心臓がバクバク鳴ってる。

でもそれくらい、びっくりしたんだ。


「な、なに?」


と、私は恐る恐る訊ねてみる。

もしかして私、変な顔でもしちゃってた……?



「喋んないから、元気ないって思ったんだけど」


──え。


「……違う?」


……うそ。


ヒヤリ汗をかいたそんな時、不意に真っ直ぐな瞳に捕らえられて、ビクッと身体が跳ねた。

ドキドキと、さっきとは違う鼓動の音が聞こえる。


……心配、してくれたんだ。



「彗……」


私はきゅっと唇を噛み締め、一点にそこを見上げる。


なんでそんな目で見るの?

なんでそんなに優しくしてくれるの?


……なんでそんなに、好きにさせるの?


目線がピッタリ絡んで、どうしようもなく胸が苦しくなる。


だけど。


「ありがとう。でも元気だよ! やっぱり今日も彗かっこいいなーって考えてただけ!」


やっぱり本当のことは言えなくて。

あはっと笑いながら言うと、彗は案の定「は?」と顔を顰めた。