騎士(ナイト)様ね〜」


ぽけーっと教室を出ていく二人を見送っていると、耳にそんな声が届いた。

さっきの声は美月のだ。

胸の前で手を組んでキラキラと目を輝かせる美月に、私は目をぱちぱちとさせる。

そして、その隣でなにか言いたげな顔してる樹里の顔もバッチリ捉えた。


「ちょいと訂正。なーんかさー? 市ヶ谷くん、みなみにだけはちょっと優しいよねー?」

「そ、そう?」

「んーー。さっきの話だけど、彼氏役もあっさり引き受けてくれたんでしょー? これ実は両想い説期待大じゃない?」


こっそりと口元に手を当てて囁かれたそれに、私はふっと息を零した。


「もー、やめてよ。そうだったらいいんだけど……彗にとって私は、ただの幼なじみだから」