「冗談だから、んな怖い顔すんなってー」

「してねぇ。コイツ揶揄うのやめろって言ったよな」

「だってさー、みなみちゃんの反応かわいーんだもん。ねー?」


ね、ねー? って言われても……。


「佐渡くんてば、そうやってみんなに言ってない?」

「えー、そんなことないよー?」


口が上手いというかなんというか。

ああやって落とされちゃう女子も絶対多いよ!


なんて考えていると、彗がはぁと深いため息を一つついた。


「……ほら行くぞ」

「もー、やっぱり不機嫌じゃん」


淡々と響いた声に、佐渡くんは口を尖らせる。


「やっぱり彗くんってぇ……っておい、彗!」


無視かよ!

と嘆く彼なんて目もくれず、すたすたと歩いていく彗。

私は遠くなっていくその後ろ姿に、ほんの少し切なさを覚えてしまう。



あーあ。もう少し、一緒にいたかったな……。