「みなみ、じっとして」

「は、はい」


……ううっ。彗が近い。


「おい、顔が逃げてんぞ」

「だってえ」


そんなこと言われても。

好きな人に……あなたにみんなの前でキスされちゃうんだよ?

ほっぺただとしても、恥ずかしくてたまらないよ。


(彗は、ヤじゃない?)

(別に。てか何回も訊いたよな、いいのって?)


……え。

それってそういう意味だったの?

って言うか知ってたの?

ぽかんと口を開けた私の手首を、彗が掴む。


(成績のためなんだろ。少しくらい我慢して)


や、我慢とかそういう問題じゃなくて。


「こっち向け、みなみ」

「もう、わかっ──」