佐渡(さわたり)くん!」

「やっほ〜」


うわぁ、相変わらず周りのキラキラがすごいや。

というか。


「今日は学校来るの早かったんだね」

「え? もしかしてみなみちゃんにまでバレてるの? 俺の遅刻魔」

「ふふっ、だって有名だもん」


佐渡くんたら、自分が目立ってるって忘れてるのかな?

しょっちゅう噂話が回ってくるくらいなのに。


「あっちゃー、マジかぁ。そりゃ気をつけねーとな。……てか」

「ん?」

「さっき俺のこと見てたでしょ?」


へっ。


「……あれ、もしかして彗だった?」

「っ!」


佐渡くんはいつも私に気さくに話しかけてくれる。

だけどこうやってたまに突拍子もないことを言ってくるから、心臓に悪い。


「ねぇ、彗にはそのこと」


焦るように、且つ密やかに言うと、佐渡くんは同じように小声で返してくれた。


「大丈夫大丈夫。ちゃーんと内緒にしとくから」

「ほんと?」


よかったぁ。

バレたら恥ずかしいもんね。


「ありがとう、佐渡くん」

「俺とみなみちゃんの仲じゃん?」


……優しいなぁ。

ポン、と肩を叩いてきた彼にじーんと胸を震わせた、その時。


「でもいいよなぁ、彗は。こんな可愛い幼なじみがいてさ」


覗き込んできた瞳が、ドキッと心臓を鳴らした。


「俺だったら速攻彼氏に立候補しちゃうのに──」

大志(たいし)


──パシッ。

低く響いた声と共に、私の髪に伸びてきた手を誰かが掴んだ。


「「彗!」」


振り返った私は、佐渡くんと声を同じにしてしまった。