「……本当に恥ずかしかったんだから。私も気をつけるから、市ヶ谷先生もお願いしますね?」

「ごめんごめん」


ムスッと口を尖らせると、宙くんは申し訳なさそうに手を合わせた。

私は、その姿になんだか嬉しくなってしまう。

……やっぱり、変わってない。


宙くんは完璧そうに見えて、昔からちょっと抜けてる部分があるんだよね。

そんなところが可愛くて好き……なんて言ったら「年上をからかうんじゃありません!」って怒られちゃうだろうから、本人には内緒だけど。


「……じゃあ、俺リレーの方行ってくるね。栢野さんも花柳さんも、水分補給ちゃんとするんだよ」

「うん、ありがとう」

「ありがとうございます……!」


ひらひらと手を振った宙くんに、美月と揃ってにこっと笑い返す。


……それからの宙くんは大活躍だった。

高校時代バスケ部に所属していて、運動はできることは知ってたとはいえ……市ヶ谷のDNAには驚かされる。

彗同様風の如く走る姿に、私は目を奪われるしかなかった。