「私なんかより、美月の方が辛いでしょ」

「へ?」


思い出して言うと、美月はきょとんと首を斜めにした。


「だってさ、彼とは遠距離なんでしょう?」

「……あ、そのことね」


ふふっと笑った美月には、2つ歳上の彼氏がいる。

高1の時から付き合い始めたその彼は、遠くの大学を志望していて。

この春、進学を機に一人暮らしを始めたそうだ。

だから今はスマホでのやり取りが基本で、会うのはたまの休みの日くらいなんだって。


「たしかに寂しい気持ちはあるけど……」


けど……?

心の中で復唱すると、斜めに落とされていた長いまつ毛がパッチリと上に向けられた。


「でもね。会えない分、会えた時の喜びが大きいの」

「……っ」


──サアア。

全身に風が突き抜けていく感覚がした。


……まるで──。