「どうしたの、みなみちゃん?」

「ううん、なんでも」


……なくはないんだけど。

ただ、少し離れたところにいる彗が目に入っただけ。


「えー、あっち見てたじゃない」

「っ!」


ば、バレてた?

美月はタオルで汗を拭う彗の姿をちらりと見てから、楽しそうに目を細めた。



「市ヶ谷くん、たしかリレーだったよね?」

「うん。彗は小さい時から走るの速いから」


この前訊いたら教えてくれたんだ。

同じく走りが得意な牧くんと、リレーに出ることになったよって。


それも……何故か男女混合の。

寝てるうちに勝手に決まってたとかなんとか言ってたけど。


「好きな人と同じクラスじゃないなんて、みなみちゃん辛いでしょう?」

「美月ぃ〜。わかってくれるー?」


やっぱり、胸がちくっとしてしまう。


……ほら。今だって、同じチームっぽい女の子が楽しそうに彗に話しかけてる。


彼女がいるって噂を知ってるのか知らないのか。

やけに距離は近いし。

ボディタッチは多いし。

彗も……慣れてるのか満更でもない感じだし。


私も同じクラスだったら……って。

そもそも足が遅いからリレーなんて無理だよってのは、禁句ね。


それより。