「お願い。〝体育5〟のために一肌脱いで?」


体育の成績が無条件で〝5〟になる大チャンスなのよ?

万年体育2──それも、筆記に助けられての私にとって5を取るなんて奇跡でしかない。

それを、体育祭のカップル対抗戦で優勝したら確実に手に入れられるなんて。


「どうしても優勝してゲットしたいの。ねー、参加しようよー」

「だから嫌だって」

「なんでもするから!」

「……ったく。本気でわかってんのかよ」


私が腕を掴んでそう言うと、怪訝そうな顔をした彗が視線を地面にやりながらぽつりと呟いた。

わかってるって……。

あっ。

その時はっと気づいてしまった。


「彗ったらひどい! 私が運動音痴だからって優勝できるか危惧してるんでしょ? 大丈夫、彗の足引っ張らないように全力で頑張るから!」


優勝が難しいのは私だって百も承知。

だけどそんなことで私の野望が打ち砕かれるなんてたまったもんじゃないと、必死になって懇願する。

すると、「……はぁ」というため息が耳に届いた。