「えー、やっぱり先生は市ヶ谷くんのお兄さんだったんだぁ」


──ドキッ。


不意に誰かの声が鼓膜を揺らして、心臓がざわめいた。


顔も少し似てるし、市ヶ谷なんて私の知ってる限りこの学校には彗しかいないから、バレてもおかしくはないけど──。


そんな宙くんの人気は、放課後になっても衰えることを知らなかった。

それどころか増すばかりで。


「ねー、連絡先教えて〜」

「先生彼女いるの〜?」


なんて、目をハートにした生徒たちの猛攻撃。

優しい宙くんだから、笑顔で誤魔化してるみたいだけど。

……さすがに、プライベートに踏み込むのはどうなのですか?


見るに見兼ねた私は、

「ごめん、先に練習行ってて」

と樹里と美月に言い残し……。


「市ヶ谷先生、ちょっと呼ばれてますよ」


そう言って宙くんを輪の中から引っ張り出した。