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高校生活2度目の春。
数日前までは綺麗なピンク色だった桜が切なくも散り始めた、今日この頃。
「お願い!」
私、栢野みなみは痛切な声を青空に響かせた。
思いのほか反響してちょっと焦ったけど、出勤や通学で賑わう中、
誰もこっちを見てなかったからセーフ……だよね?
「ねぇ、彗〜」
だめ?
と見上げて覗き込むのは黒いピアスの彼、市ヶ谷彗。
私と同じ学校に通う同い年で、生まれた時から家が隣同士の幼なじみだったりする。
「……なんか言ってよ」
何も答えてくれない彗だけど、
漆黒の前髪から覗く目は冷たいし、眉だって怪訝そうに寄せてるから、機嫌が悪いってことだけはわかる。
それでも挫けない。
彗が素っ気ないのはよくあること。