「みんな、ちょっと集まってー!」

 お、あれが御輿隊長か。なんや、ヒョロっとした男やな。めっちゃ色白やし。

「出店隊と法被隊からヘルプに来てもらったので、進捗確認をしつつ役割分担しますね。あ、御輿隊長を務めております、邦楽の祝原(いわいはら)です」

 祝原は、マケットと御輿の現物を指さしながら、作業の進捗を説明した。
 ううむ。そこそこ遅れとるやないか。全体の形はできとるが、細部を掘る作業がまだまだや。ヤマタノオロチの胴体も、鱗とか細かいしな。

 予定では28日から色塗り、9月6日に搬入、翌7日が藝祭本番。せやけど、あと10日で色塗りができるようには思えんぞ。

 やはり、この暑さが大敵なんや。祝原も疲れた顔しとるしな。今日集まったんは10人ほど。そのうち半数は法被隊と出店隊からのヘルプやけど、御輿隊の連中は、相当疲労が溜まっとるんやろうな……。

「それで……巻きで作業をするためには、もっと効率を上げていく必要があるんだけど」

 祝原の言葉に、浅尾っちがぬるっと前へ進み出る。そして祝原が持っている紙を指さしながら口を開いた。
 
「それなら、ここを……こういう感じで作業するほうが、無駄が省けるんじゃねぇの」
「おぉ……なるほど。さすが浅尾くん、頭いい! ち、ちょっと、それ書き込んでここに」
「まず、こっちを作業して……」
「ふむふむ」
「この先の天気予報も加味すると」
「あぁ、そっか」

 なんや、浅尾っち、ちゃんとコミュニケーションとれとるやん。少しずつ慣れてきたんかな? それとも祝原だけが特殊なんか? まぁ、隊長やしな。
 しばらく浅尾っちとゴニョゴニョ話し合ったあと、祝原がパンと手を叩いた。

「はい、みなさん、作業分担が決まりました! 28日からの色塗りはかなり厳しいというか、ほぼ無理なので、2日遅れの30日から開始できるように動いていきましょう!」

 そのあとは、浅尾っちは無言やった。祝原がメンバーに指示するのを聞くわけでもなく、とっとと自分の持ち場で作業をしはじめる。

 周りの連中は、浅尾っちが自ら口を開いたことに、少しビックリしとったな。せやけど、おれは知っとるんやで。浅尾っちが、ほんまは誰よりも優しくて、LOVEに溢れた人間やっちゅーことを。

 そんな浅尾っちのLOVEが反映された神がかり的なスケジューリングのおかげで、その後はめちゃくちゃ順調やった。おれは法被隊のパフォーマンス練習との往復やったが、御輿隊のメンバーも、少しずつ作業に復帰してきとる。

「なんか浅尾くんって、意外と怖くないね」
「うんうん。長岡くんが言ってた通り」
「ていうか、長岡くんは穏やかで優しいよね」
「物腰柔らかくて、いいよねぇ」
 
 作業をしとると、そんな声が聞こえた。
 ヒデのヤツ……! しれっとレディたちにアピールしとるやんけ!