しかしヒデは体力に自信がないのか、しきりに暑さを気にしとった。御輿隊はずっと屋外作業やしな。
 ちなみに法被隊は屋内や。決して暑さが嫌やから法被隊を希望したわけちゃうぞッ! 法被隊の作業が落ち着いたら御輿隊を手伝うつもりやしな! 助け合いこそ青春なり!

「屋内でも熱中症にはなるからね。一佐も、ちゃんと定期的に水分補給しなよ」

 やっぱオカンやろ、ヒデ。
 まぁ確かに、屋内とはいえ油断したらあかんしな。作業しとったら汗かくさかい、水分補給はめっちゃ大事やで。せやけど毎日()うてくるのはもったいないし、2リットルのマイボトル2本に麦茶をたっぷり入れていくか。

 っちゅーわけで、さっそく翌日から藝祭に向けての準備が始まったのであーるッ!
 
「隊長の吉鶴みやこです! あ、工芸です! よろしくお願いします!」

 各隊には隊長と副隊長がおって、メンバーのスケジュールや作業の進捗を管理することになっとる。
 法被隊の隊長は、パッと見は文芸少女っぽい感じの地味……もとい、清楚系女子や。おれよりはるかに小柄やし、アリやで。

「えっと、趣味はカラリパヤットです!」

 ……なんやねん、ヒヤリハットて。よう分からん趣味やな。

「副隊長の三船孝介です。邦楽です」

 こっちはパリッとした真面目そうなやっちゃな。黒縁メガネで、ちょっとヒデっぽい。

「趣味は……森でナナフシを探すこと、かな」

 うむ、変! なんっで探すのがナナフシやねんッ! トトロに会いに行く的な感覚か? いや見つからんやろッ!
 やはり藝大には、一風変わったヤツしかおらんのか。ほんま、おもろい学校やで。

 さて、各々自己紹介が終わったあとは、さっそく作業開始や。
 おれらが作る法被のデザインは、御輿と同じく学生からデザインを募集して、投票で選ばれる。御輿とセッションするわけやから、もちろんそれを加味したデザインになっとるで。

 そして、どっかに発注してバーンと作ってもらうわけやなし、布選びからプリント、縫製まで、自分たちで1枚1枚手作業するんや。

 布へのプリントは、メッシュ状の版にインクを通過させる(あな)をあけて印刷するシルクスクリーンっちゅー技法を使う。もちろん、デザイン通りに孔をあけた版も自分たちで作るんやで。
 それからインクの色ごとにレイヤー分けをして、1色ずつ順番に刷り重ねていく。当然、デザインが複雑になればなるほど手間がかかってまう。

 せやけど、1枚ずつ想いを込めて作っていくんはめちゃくちゃ楽しい。まさに青春! これぞ青春! ともに流した汗と涙が絆となって、おれたちの心をひとつにするんや!

 そんな感じで作業を続けていた、ある日。買い出しに行っていた女子が作業部屋に入るなり、心配そうな表情で言った。

「いまさぁ御輿隊の様子を見てきたんだけど、誰か熱中症でダウンしちゃったらしいよー」

 熱中症でダウン……やて!? ま、まさかッ……!