「浅尾きゅんって……もしかして浅尾桔平君の友達!?」

 女神が詰め寄ってきて、おれらは唖然とする。いきなり詰め寄られたからやない。その美貌に圧倒されたわけでもない。

 何故なら……何故ならッ……女神の声が……めっちゃ低音ヴォイスやったからッッッ!

「リン、素が出てるよ」

 女神の友人A(♀)が窘める。その横の女神の友人B(♂)は、笑いをかみ殺していた。

「あ、ごめんごめん! 実は俺、女装が趣味でさ。だからこの格好はあんま気にしないで」
「いや気にするわッ! なんや趣味て!」

 思わずツッコミを入れてしもた。ヒデはポカンと口を開けたままや。

 ちょ、待てよ。女神は女神ちゃうんか? もしかして股間にはおれと同じものがついとるんか? いやもしかすると、おれよりでかいのんが……って誰のが小さいねんッ! いやちゃうちゃう、あかん頭が混乱しとるで。ディープなブレスで落ち着けYO! YEAH!
 
「男の子だったんだぁーすっごく綺麗だねぇー! あ、日本画専攻1年の米田真帆でーす! ヨネって呼んでねぇー」

 ヨネは持ち前のコミュ力を発揮して、女神に笑いかける。

「俺はピアノ専攻1年の末延(すえのぶ)凛太郎だよ。で、ヨネたちは浅尾君の友達なの?」
「そうだよぉー! 日本画1年では私達4人だけが現役生だからぁーなんかいつも固まってるんだよねぇー」
「へぇー現役生か! じゃあ1コ下なんだな。俺は1浪だから」
「そうなんだねぇー! リンちゃんは浅尾きゅんの知り合いなのぉ?」

 さすがやな、ヨネ。もうマブダチ感あるやんけ。こっちは女神が男神やったショックに打ちひしがれとるっちゅーに。

 こんなんアリか。末延凛太郎て。こないに美しいのに男やて。おれの運命は何やったん? あの電流は何やったん?

「……だから静電気だって言ったじゃん」

 ヒデがボソッと呟く。まるでおれの心を読んだかのように。なんや、その憐れむような目は。

「知り合いっつーか、会ったことあるんだよね、小学生の時に。エリサ・ラハティさんの誕生日パーティーに行ったんだよ。俺の父親が音楽講師やってて、その縁なんだけど。あ、ちょっと待って! 塩サバ定食取ってくるから!」

 早口で言った後、女神……もとい、リンは慌ただしく立ち上がり、友人AとBもそれに続いた。

「リンちゃん、やっぱりピアノ専攻だったねぇーさすが一佐くんの洞察力だよぉ」
「せ、せやな……」
「でもぉー男の子だしぃ……一佐くんの彼女にはなれないねぇー! ざーんねーん!」
「ぐはぁっ!」

 魔法使いヨネの痛恨の一撃! 勇者イッサは傷つき倒れた!

「……まぁ、あんなに綺麗な人が男性だとは思わないよね、普通は。仕方ないよ……」

 僧侶ヒデが回復の呪文を唱える。せやけど勇者イッサのハートはブロークン! YEAH!