っちゅーわけで、翌日から早速女神の捜索を開始した。まずは昼休みに学食で飯を食いながら、女神の姿を探す。

「音校の生徒ってだけじゃ、さすがに対象が多すぎるよ……」
「なんかー探偵みたいだよねぇーワクワクッ!」

 助手はヒデとヨネやけど……やる気の差がありすぎやろ。もっと漲らんかい、ヒデ。

 駄菓子菓子、確かにヒデの言う通り手がかりは“音校”のみ。学科どころか、そもそも学部なんか院なのかも分からへん。まぁ若かったし、学部で間違いないとは思うけどな。おれの見立てだと、女神はタメもしくは2歳程度年上やで。

「ええか。女神は胸あたりの長さの栗色サラサラストレートで、前髪パッツンや。透き通るぐらい色白で頬と唇は桜色。身長はおれよりほんの少し高い。おめめパッチリまつ毛ばっさばさの美少女やで」

 ヒデがブツクサやかましいので、簡単に似顔絵を描いて説明した。我ながら似とるな。

「これ、本当に似てる? 美化して描いてない?」
「んなわけあるかッ! 天才絵師に対して失礼やぞヒデ!」
「だって一佐って、思い込みが強いし……」
「恋は思い込みやッ!」

 まったく、恋を知らん男はこれだからあかんねん。ドキがムネムネして夜も寝られへん……なんて甘酸っぱい経験なんぞ、したことないんやろな。
 恋に落ちたら、相手のことがとてつもなく美化されるもんやろ?あばたもえくぼってやつやで。
 
「こんなに可愛い子なら目立ちそうだけどぉー専攻とか学年が分かればもっと見つけやすいんだけどねぇー」
「女神はピアノ専攻やッ!」
「……根拠は?」

 ヒデが疑いの眼差しを向けてくる。ほんまさっきから失礼なやっちゃ。
 
「華奢な体に対して、指が太かったからや」
「あ、意外とマトモな根拠」
「当たり前や! おれを誰やと思てんねんヒデ! 体は子供!頭脳は大人! ……って誰の体が子供やねーんッ!」
「いえーい! 真実は! いつもひとつ!」

 相変わらずヨネはノリノリやで。名探偵ISSAの助手に相応しいな!

 とにかく、あの指は絶対にピアノ弾きの指や。何故分かるのかって? それはな、恋多き男の経験と勘がそう言っとるんや。

 おれはヒデとはちゃうねん。京都時代にどれだけの恋をしてきたと思てんねん。幼稚園のチューリップ組のヒナちゃんからはじまり高校の美人生徒会長まで、数々の浮名を流してきた伊達男やで。恋愛の“れ”の字も知らんようなチェリーボーイとは格が違うんや!

「むむー!? あの子、女神っぽいぞぉー!」

 いきなりヨネが大声を上げる。いやいや、いくら運命言うてもそない簡単に見つかるわけ……

「って、女神やんッッ!」

 おった! ほんまにおった! 間違いない! あのシルクのように滑らかな栗毛! 富士山頂に積もった雪のごとく白い肌! 甘い味がしそうな桜色の唇! おれの女神が! 学食へと入ってきたッ!