「ヒデちゃん、お隣いいかなぁー?」
「うん、どうぞ」
 
 ……おれの隣も空いとるんやけどな。あれやな、照れとるんやなきっと。おれを異性として意識しとるのかもしれへんな。それとも向かいからおれの端正な顔を見たいとか?知らんけど。

「浅尾きゅんをお昼に誘ったんだけどねー食べないって言ってどっか行っちゃったんだよねーざんねーん」

 ランチに誘うとは……やっぱりヨネは浅尾っち狙いなんか?

 いや、もしかすると“人類みな兄弟タイプ”かもしれへん。男も女も老いも若きも分け隔てなく仲良うするやつや。なんやヨネからはそんなニオイがするで。ほなら、仲間に引き入れるしかあるまいッ!

「なぁなぁなぁ、ヨネも協力してくれへん?」
「えーなになにー?」

 おれが浅尾っち誕生日パーリーについて説明すると、ヨネの瞳がキラキラ輝きはじめた。なるほど、これは祭り好きなタイプやな。気が合いそうや。

「……でな、学校で祝おう思とんねん」
「そっかーそうだねぇー夜はきっと彼女とデートだろうしねぇー」
「せやせや……って、浅尾っちに彼女おるの知っとんのか!?」
「うんー本人が言ってたからー」
「なんやてッ!?どうやって聞き出したんや!?」
「彼女いるのー?って訊いただけだよぉー」

 高校3年間一緒やったヒデですら知らんのに……やはりタダ者やないで、くノ一おヨネッ!
 
「どどどどどどんな彼女やって!?黒髪ロング美女かッ!?」
「どんな子かまでは分からないけどぉー……どのぐらい付き合ってるのー?って訊いたらー高1の時からって言ってたよぉー」
「3年ぐらいっちゅーことか!?ながッ!」
「そうなんだ……全然知らなかった」

 ヒデが頭を掻く。まぁメンズよりガールズの方が恋バナは盛んやしな。

 しかしヨネの様子からしても、別に浅尾っちをロックオンしとったわけやなさそうや。純粋に仲良うなりたいだけって感じがするわ。きっと浅尾っちも、この超平和オーラに毒気を抜かれたんやろな。せやから訊かれた事にも素直に答えるんやろ。

「それでープレゼントはどうするのぉー?」
「それやねん。浅尾っちの欲しいモンとか好きな食いモンとかを調査してくれへん?ヨネなら聞き出せそうやし」

 ヒデは浅尾っちの性格こそよく理解しとるものの、趣味嗜好に関する情報はアテにならへん。自分からグイグイ質問するタイプやないしな。ここはくノ一の色仕掛けが効果ありそうや。
 
「おっけーい!後で言ってみるよぉー実習室来るって言ってたしぃー」
「頼んだで!ヨネがこの“PASSION and LOVE大作戦”のカギを握っとるんや!」
「いつの間にそんな作戦名に……」
「パッションエーンドラブ!素敵な作戦だぁー!わくわく!」

 えらいノリがええなヨネは。ヒデと大違いやな。
 しかし頼もしい仲間が加わったで!これで作戦成功間違いなしやッ!