「大輝ー!?お前来てるならさっさと来いよ!」

グラウンドからの大声に目を向けると、同時にこちらを見上げた旭陽と視線が合った。
不安そうな表情をした旭陽に、私は大丈夫との意味を込めて手を振る。

「やっべ、じゃあ行ってくるわ!無理せず楽しんで」

柔らかく微笑む大輝の優しさは間違いない。
この先もずっと、旭陽と一緒にいてくれると信じられる彼に、私は思わず思いを口にしていた。

「大輝、これからも、旭陽と野球続けてね。野球辞めさせないで」

大輝は一瞬表情を固くした。だけどすぐに親指を立てて、歯を見せて笑った。
「当然!」と笑う彼の笑顔ほど、頼もしいものはない。

胸につかえていた一部分が取れた気がして嬉しくなる。

「ごめん、澪音私やっぱダメだっ……」

そのとき、横から震える声が聞こえて、私は驚いて目を向けた。
大輝と話している間、ずっと堪えていたのかもしれない。

横を見ると、朱里が泣いていた。

「……なにか、聞いた?」

もしかして、と思っていた。
偶然じゃなさそうだった。それに、不自然ないつも通りだったから。

「旭陽から聞いてた。きっと知らずにいたら後悔するからって。だけどずっと、どうしても、受け入れられなくて……会いに行けなくて、やっと今日覚悟を決めて会いにきたのに……」

ぎゅっと抱きしめられる。
応えるように手を背中に回すと、朱里は嗚咽を漏らした。