椅子に座って、旭陽のお菓子作りを見つめる。

「澪音、バターって、」
「あっ、ちょっとレンジで溶かしてからの方が」
「50g……ってこんくらいか?」
「お菓子作りはちゃんと計らないと!!」

気付けば手伝うように立ち上がり、一緒にお菓子作りを始めていた。

「すっげえ、見映えも味も完璧……!やっぱ澪音の作ったお菓子うめぇわ!」
「私はちょっと口出しただけじゃん、旭陽のだよ」
「いいから、澪音も食べて」

ころんと、口に入れられたスノーボールは、さっきよりもさくさくとした食感が残り、程よいところで溶けてなくなる、私のスノーボールだった。

「ふふ、美味しい」

最近は、食べ物を美味しいと思って食べることも減っていて、ただ、栄養のためにと口に入れる日々が続いていた。
自然と、美味しいと思った自分に嬉しくなる。

宣告されていた7月を超え、8月に入ろうとする中、私の命は、間違いなく旭陽に支えられていた。