「最後まで、俺が一緒にいる」

そう宣言した通り、夏休みに入った旭陽は毎日私の家にやってきた。
夏祭りの後、力が抜けたように寝込んでしまい、体力も一気に落ちた私は、もう数日だろうと覚悟を決めていて。

「澪音、何がしたい?やりたいこと全部叶えてやる!」

そういう旭陽に対して、

「旭陽と一緒にいられたらそれだけでいい」

そう微笑む以外、希望は何も出てこなかった。

どうせ、筋力も落ちてしまったこの身体じゃできることも限られている。
そんなマイナス思考の私を元気づけるように、旭陽は毎日何かを持ってやってくる。

「澪音、よくスノーボール作ってたの覚えてる?」
「あぁ……美味しく出来たらいつも届けてたよね」
「懐かしくて、俺作ってみたんだけど上手く出来なくてさ」

そういった旭陽の手元を見ると、崩れてしまったスノーボールがお皿に乗っていた。

「食べたい」

そう呟くと、旭陽は小さな欠片を手に取り口元に近づけた。

小さく口を開くと、優しく、甘い味が放り込まれる。
一瞬で溶けていくスノーボールは、とても美味しかった。

「美味しいよ?旭陽凄い」
「いやでも澪音のと違うから」

自分のスノーボールを見つめ、小さく笑いながら食べる彼に、私は口を開く。

「多分、油の量が違うんだよ。まとまり結構変わるから」
「油?すげえ、見ただけで分かんの?流石だな」
「多分だけどさ、」
「えー今からちょっと作ろうかな。キッチン借りてもいい?てか、澪音見てて教えてよ」

そんな旭陽に、私は自然とベッドの外へと連れ出される。
上手く力が入らず、おぼつかない足取りで立ち上がった私の手を優しく引いて、旭陽はキッチンへ向かった。