適当に開いた口は、驚くほど素直に、自分の感情を伝えていく。
自分ですら、明確には自覚できていなかったような気持ちが言語化されて私の胸に落ちていった。

「だけど、そんなときに夏祭りに誘ってもらえて、私、どうしても行きたくて。
とっくに限界だったのに、無理して行ったの。これを最後にしようって決めて。

本当はね、嬉しかった。でも、申し訳なかった。私が近付かなかったら、旭陽は私の事好きになんてならなかったのに……。
そんな辛い顔、させないで済んだのに。

私も、昔から大好きだよ。好きだから。私はいなくなるから、辛いのに巻き込みたくないから。
だから、断ったの。ほんとにごめん」

最後の方は、俯いてぽつぽつと零す私の話を、旭陽は最後まで黙って聞いていた。

冷静だったはずの気持ちが揺れ動き、再び涙が止まらなくなったその顔を両手で掴まれて、真っ直ぐな旭陽の瞳と視線が交わる。

「舐めんなよ。お前がいなくなっても俺は折れない。強く生き続けて見せるし、絶対お前を心配させない。だから、澪音は諦めなくていい」

私のことを真っ直ぐだと言った。
そういう旭陽の瞳は、私を捕らえて離さないのは、誰よりも真っ直ぐで穢れのない瞳だった。

「一緒にいたい。最後まで、好きでいたい。好きでいて欲しい」

その目に絆されるように、ぽつりと溢れた本音。

「ありがとう。最後の最後まで、俺が一緒にいるから」

それに寄り添うように、旭陽は私を引き寄せて、優しく優しく、抱き締めてくれた。