家までもう少しというところで、胸が苦しくなり私は足を止める。

なんで……?薬はまだ切れていないはずなのに、痛い。息が、苦しい。

旭陽のことを考えていたからか、気付くのが遅れた私は、荒く呼吸をしながらカバンの中の薬を探る。
だけど、暗くて街灯の少ない道では、上手く薬が見分けられず、私はしゃがみこんでしまった。

旭陽は、ついてこなくなった私に気付き振り返る。

「澪音?なんか失くした?」

しゃがみ込んでカバンをあさる私の姿に、旭陽はゆっくり近づいてきた。

「……っ、はあ……、痛い……苦しい……っ」

既に頭が朦朧としていた私は、旭陽の前にも関わらずそんなことを呟き、カバンを漁る手を止めその場に膝を付いた。

「え……?澪音?」

異変に気付いた旭陽は、私の背中を摩り焦ったように顔を覗き込んだ。

「真っ青。どうした?どこが痛い?」
「……ぅあ、り、莉音……莉音ちゃん…っ」

うわ言のように、莉音ちゃんを呼んだ私。

「なあ、おい!」「澪音!」

駆け寄ってくる足音と共に、聞きなれた声が響く。

「莉音さん……」

真っ青な顔をした旭陽は、少し離れ、変わりに駆け寄って来た莉音ちゃんが私に薬を飲ませた。

「ばか澪音」
「莉音ちゃん、ごめん。旭陽、旭陽も……」

ぼんやりした意識の中、莉音ちゃんと旭陽に謝り続ける。
その様子を、旭陽は戸惑ったように見つめていた。

「ごめん、旭陽。今日は、何も聞かずに帰って」
「でも、澪音が」
「大丈夫だから」

旭陽を追い返す莉音ちゃんの声は、半分くらいしか聞こえていなかった。

最後だって、決めてきたのに。完璧にできなかった。
悔やまれる中、私は迎えにきた父の背中に乗り、そのまま眠りについた。