その頃には学校も休むことが増えてきていた。

やりたいことが叶わないことを認めていく時期がきていたのだ。

やりたかったこと、行きたかったところ、動けなくなった途端に溢れ出す欲望は、もう諦めなければいけない。
だけど、一番の心残りだった旭陽との関係は上手く叶ったのだから。

間違いなく最高の思い出は作れたのだから。

そう思えることが幸いだった。
上を見上げればキリがない。強がりかもしれないけれど私はそう自身の心に諦めどころを落とし込んでいた。

「おっはよ〜!」
「澪音ちゃん!いつぶり?長いサボりだったね!?」
「おー!レアキャラじゃん?」

挨拶をする私をクラスメイトは明るく受け入れてくれる。
きっと不思議に思っているはずだけど、ただのサボりだと言って笑う私に、追求する人はいなかった。

小学校からの友人で、中学からも変わらず仲良くしてくれた朱里。大輝。
それに初恋の幼なじみの旭陽。

彼らに何も言わずに去ることは正しいのかも分からないけれど、普通でいたいと願う私には、もう悪くなる一方の今更、伝えることは出来なくなっていた。

「澪音。お前、なんか痩せた?」

席に座ると、すぐに後ろから旭陽の声。

「ん?ほんと?ダイエット効果かなー?」

旭陽は心配そうな顔のまま「必要ねーだろ」と呟く。
素直に嬉しい気持ちと、知られてはいけない残酷な事実が交差する中、私は表情筋に力を込めた。

「えー、旭陽、超優しいじゃん!」
「うるせえ」

冗談を放てば、簡単に消えてしまう旭陽の珍しく素直な優しさ。
その関係性が楽しくて嬉しくて。

気を抜いたら、せっかくの旭陽との時間を掻き消してしまいそうな苦しい気持ちを押し込むように、嬉しいで埋め尽くす。
私は取り戻した初恋の心躍る時間を、思う存分に楽しむことに命を懸けていた。