やめてからもずっと仲良くしていたけれど、一度も部活の話を聞くことはなかった。
思わぬ言葉が出てきて、俺は、頭を抱える。

「俺はただ、逃げただけで。逃げずにここまでやりきるなんて俺にはできないし、だから俺なんかよりずっとお前のが」
「だまれ」
「バカ、離れろ!」

黙らせるように、男の全力で抱きつかれて、気持ち悪かった俺は、大輝を引き剥がす。
泣きながら笑う大輝がおかしくて、俺も笑ってしまった。

「旭陽、高校で一緒に野球しよう。今なら俺、お前と肩並べられる」
「俺が、頑張んなきゃだろ」

小さく笑った俺に、朱里も大輝と顔を見合わせて笑い、大輝の夏は本当に幕を閉じた。
ついでに俺の夏まで消化させてくれたあいつには感謝しても仕切れない。

「澪音も、来れたらよかったね」

朱里の呟きに、俺は小さく頷く。

「地区大会も行くって言ってなかったっけ?」

疑問に思っていたことを尋ねると、朱里は小さく頷いた。

「そうなんだけど、なんか急用ができたって。残念がってた」
「なんか、最近忙しそうだよな?急用多くね?」

大輝と朱里の会話を聞きながら、俺はその後をついて歩く。
小さな違和感が重なり始めたのはこの頃だった。