「ええ…」

顔にあるパーツの全てを同時に下げ、分かりやすく落胆した澪音。
その表情を目にした途端、俺は勢いよく噴出した。

「あっはは…、お前その顔、やっぱ変わんねーわ!」

学校中が部活に一生懸命なこの季節、どうしても憂鬱な気分が大きくなる気持ちを、澪音の笑顔が癒してくれていた。

懐かしい感情が溢れ出す。

喜怒哀楽が分かりやすい澪音の表情が、愛しかった。
彼女と過ごす時間が楽しくて大好きだった。

今の澪音が見せる表情や仕草は、早く認めろと言わんばかりに毎日俺の心に刺さっていた。

「旭陽、変わんないね」

驚いたように、俺を見つめそんなことを呟いた澪音に急に気まずくなり、意識的に口角を下げる。
二人の間に、見て取れるような微妙な空気が流れ、俺は、静かにゲームを閉じた。

「今日はもう終わり」
「えー、なんでよ!」
「勝てねーこと分かっただろ」

さっさとスマホを片付けて、教科書を広げた俺に、澪音はぷくりと頬を膨らませて前を向いた。

俺は、澪音にバレないように小さく息を零す。

彼女と関わるようになって、気付いた気持ちだった。
俺は今もなお続く、初恋の気持ちを自覚せざるを得なかった。