「何のゲーム?私もやりたい!」

突然頭上から降りてきた声に顔を上げる。
久しぶりに感じる彼女は、前の椅子に横向きに座り、そのままの勢いで、後ろにある俺の席に肘をついた。

「FPS。お前ゲームできねーじゃん」

平然を装い自然に返すけれど、急に現れた澪音に俺は落ち着かない気持ちを必死で抑えていた。

文化祭を経て、自然と話すようになった俺らは、休み時間にそんな他愛のない話をする関係になっていたけれど。

最近彼女は、それまでにも増して授業をサボるようになり、まる1日見ない日もある。
そんな彼女の突然の登場は、俺でなくても驚くに決まっている。

「ひどい!できないとは限んないじゃん!」

大袈裟に拗ねるような口調を作って、俺のスマホを覗き込む。
ふわっと香ったのは、爽やかな柑橘系の香りで、澪音も香水なんてつけるんだと、ぼんやり思った。

「何やっても下手くそだっただろ」

昔は俺の家で、よく一緒にゲームをした。

当時から澪音は、定期的に思い出したかのようにゲームをしたがるけれど、いつも友達とゲームをしている俺には敵う訳もなく、いつも思いっきり負かせていた。

今思い返すと、少しくらい手加減したらいいのに、とも思わないこともないけれど。

「上手くなってるかもよ?なんせ私達には3年の空白があるからね!」

自慢げに述べる澪音に、ちらりと視線を向けると、声色の通りすでに勝ち誇ったような笑みを見せる彼女がいた。