片付けには時間がかかっていた。
きっと、教室に戻って来た私達は、酷く長い時間感傷に浸っていたから。

「おーい、野球部、急げよ」
「さっちゃん、もう後輩集まってるから行くよ」

別のクラスの子たちが片づけを終えて、部活動へと呼びに来る。

「あ、いいよ。部活優先して。私やるし」

そんな皆を、私は笑顔で送り出していた。

どうせ部活には所属していないのだから。みんなよりは早く帰れるだろうし。

部活のある皆は申し訳なさそうにしながらも、駆け出していく。

6月からは、各運動部で中学最期の大会が始まる。
気合が入っている時期なのだ。邪魔はできない。

クラス内がまばらになっていく中、旭陽は残って片づけをしていた。

もう、文化系の女の子しかほとんど残っていないことに、彼は気付いているのだろうか。

小学生の頃から一緒に野球をやっていた大輝はとうの昔に部活へと向かったのに。

彼が部活に所属していないことは、この3年間ずっと影から見ていた私は知っているけれど。

なんだかその背中が悲しそうに見えて、私はほうきを握りしめてその様子を見つめていた。