「澪音、表彰!」

満足気に拍手をしていた私の名前を、旭陽の爽やかな声が呼んだ。

「え……?」

そんな、私は劇には出ていないし。

クラスを見渡すと、みんなが当然と言うように頷いていて、私は何も言えず固まってしまった。

隠していたはずの涙があふれる。

こんなに中心にいられる、心から頑張ったと思える、こんな経験きっと、病気にならなきゃ出来なかった。

これ以上ない、最高の思い出ができた。
先日まで、こんな風に目を見ることも出来なかった旭陽が私に笑いかけている。
私はもう、これで十分だ。後悔なんてひとつもない。

溢れる感情に立ち尽くし、動けないでいる私の腕を旭陽が掴んだ。
手を掴まれたまま二人でステージに上がり、黄色い歓声が響く。

トロフィを受け取った旭陽が、くるりと振り返り、そのまま高く掲げた。

「3A!ありがとうー!!!」

わああ、と大きな歓声が響く。
まるで自分が浴びているような歓声に、私も貰った賞状をクラスのみんなに向けて広げた。

ステージの光は思ったよりもずっと暑くて、キャストとして上がることのなかった私には知らない景色だった。

「旭陽、ありがとう」
「お前が頑張ったんだろ」

小声で会話をしながらステージを降りる。

当然のように笑って言う旭陽の背中は、温かくてかっこよかった。