「俺の、言い方が下手くそだったんだよな。それはまぁ正直自覚あるし」

少しの沈黙の後、簡単に折れた旭陽が意外だった。

意地っ張りで、負けず嫌いで、優しいけれど不器用な彼が、こんなふうに簡単に非を認める。

それは私の知らない旭陽で、それがまた随分と大人っぽく魅力的に見えた。

絶対言ったよ。鮮明に思い出せるもん。

そんな風に用意されていた言い返す言葉は出ず、私は旭陽の心を素直に受け取ることにした。

「それは……じゃあ、旭陽は私の事嫌ってたわけじゃないってことだよね?」

「いや別に……、元々そんなこと言ってねーし」

恥ずかしそうに視線を逸らす彼は、直球な言葉には素直にはなってくれないみたい。

だけど十二分に伝わる心に、私は嬉しくなって隣に並んだ。

「なーんだ、じゃあもっと早く話しかけたら良かった。ずーっと睨まれてる気してたんだもん」

「それは、俺だって転校とか大事なこと伝えて貰えないなんて、大した仲だと思われてなかったんだって、そう思ってて」

「じゃあこれからは、昔みたいに一緒にいてもいい?たまには登下校も一緒にしてくれる?」

「は?何言ってんのお前。やだよ、またからかわれるだろ」

突っぱねて、早足で歩き始める旭陽。

「なんでよ、けちー!」

私が、慌てて後を追うと、旭陽はその足を少しだけ緩める。
口も態度も表情もクールだけど、心の温かさは隠し切れない。

「旭陽!これからもよろしくねっ!」

嬉しくてそう微笑むと、旭陽はため息交じりに「ああ」と頷いた。