小学4年生の初めの頃、だったと思う。

私と旭陽は、校内のクラブ活動で野球チームに入っていた。

地域のチームは、男の子たちのチームしか無かったから、遊びみたいなものだったけれど、学校では男女混合で野球ができて。

いつも応援している旭陽と、同じチームで野球ができることが嬉しかった。

「旭陽!キャッチボール!」

ウォーミングアップのペアは、活動に参加するようになってからずっと旭陽と組んでいて、そこに疑問を持つことすらなかった。

帰ってからも一緒に練習をしていたし、旭陽のアドバイスは的確で、自分でも自覚できるくらいボールが変わったり打てるようになるのが嬉しかったから。

だけどその日は違った。

「もう女子とやれよ、俺、お前と組むの嫌だし」

大きな声で響いた否定的な言葉に私は立ち尽くした。

周り一体に聞こえたであろうその声に、ざわざわと嫌な声が溢れる。

視線を浴びて、否定されたことが恥ずかしくて、私は今にも泣きそうだった。

そのまま旭陽からは視線を逸らし、朱里の元へと走った。

否定された理由を聞くのも怖くて、でもきっと嫌われたことは分かったから。

応援に行くことも、クラブ活動に参加することも、一緒に登下校をすることもやめた。

怖かったのだ。
もう一度あの言葉をぶつけられるのが。

それに、旭陽と一緒にいたくて入っただけのクラブ活動だったし。

旭陽と過ごさなくなった私は、同じ活動をしていた朱里と多くの時間を過ごすようになって。

最初は少しだけ寂しかったけど、いつまでも幼なじみにべったりなのもちょっとおかしいかって、子供ながらに納得したりして。

落ち着いてきた最中、体調を崩した私は、入院する形で、旭陽から離れることになった。

旭陽とのすれ違いはそれからなのだ。
それ以来5年間、会話することがなかった。

まさか、間違えているはずがない。