歩き出して数分は、朱里達が見ていたらきっと引くほどの地獄のような空気だった。
ひとことの会話も無いまま、ただ歩く音が響き、私は浅い呼吸を繰り返していた。

暫くして、少し前を歩いていた旭陽が、いつもの通学路から道を外れ進んでいき、私は驚く。

寄り道……?着いて行っていいのかな?
でも一緒に帰ろうって言ったし……。

足を止めて困っていると前を行く旭陽が振り返る。
視線を合わせた後、私は旭陽の待つ方へと進めた。

不思議と、勇気が出ていた。

草原を抜けていくと、小川が見えて、私は思い出す。

「あ、この道……」

思わず呟いた私に、旭陽はほんの少し視線を向けて、トントンと置き石を飛んで向こう岸へと渡った。

旭陽が通ったのは、小さな近道だった。
小学生の頃、一緒に登下校をしていた私たちが毎日通った道。

私は中学生になってからは、通らなくなっていたけど、旭陽は今も、使っていたんだ。

懐かしい気持ちになって後を追う。

トントンっと、リズミカルに進むのが楽しかった。