先に店舗を出て外で話している旭陽と大輝に、続いてお店を出ようとした時、朱里に引き止められた。

「ねえ、澪音。一緒に帰んなよ」
「えっ!?む、むりだよ」

会話すらままならない私には到底信じられない提案に、私は勢いよく首を横に振った。

「頑張るって言ってたじゃん!ね!?」

店を出るなり背中を押された私は、そのままの勢いで、旭陽と大輝の輪に入り込んでしまう。

「おお、澪音、すげー勢い」

楽しそうに笑う大輝に救われながら、私は恐る恐る旭陽を見上げた。

「……?」

無言のまま、眉をひそめた訝しげな表情で見下ろす彼に、私の心は簡単に折れそうになる。
ゆっくりと後ろに下がる私の背中を朱里の手が支えて、その足は止められた。

朱里の温かさに、もう逃げられなくて。
私は泣け無しの勇気振り絞って、言葉を口にした。
準備なんてできていなくて、半分投げやりだった。

「旭陽、同じ方向なんだし、一緒に帰ろうよ」

旭陽は目を見開き、瞬きを何度か繰り返した。

「いいけど」

不機嫌そうな声は、低かったけれど、断られなかったことにとりあえず安心する。

「お!じゃあちょうど良かった!私、大輝と寄りたいとこあるんだよね、ここで解散にしよ!」

一難去ってまた一難。
まさかのスパルタで朱里が私を突き放し、大輝の腕を組む。

ものの一瞬で二人きりにされてしまった私たちは、しばらく固まった後、旭陽の「帰るか」というひと言の元、足を動かすことになった。