「私と大輝はね、このふたつが気に入ってて」

朱里から送られたURLを開いてあらすじを確認する。

その中の、シンデレラを現代チックにオマージュした話が、感動してお気に入りだった。

それに、登場人物が平等に大切な部分を担っていて、キャスト全員で物語に関われそうな構成も気に入っている。

「……私、」「これ好きだわ」

旭陽と声が重なり、一瞬視線が交わる。

いちばん遠い、斜め向かいに座る彼と、すぐに離された視線は妙な空気を作り出して、私は俯いた。

……やっぱり、嫌われているとしか思えない。

大輝は当然だけど、朱里にだって楽しそうに話すのに、私とはこんな風に視線を逸らす。

話し出さない私と旭陽に、大輝が助け舟を出すように先を仰いだ。

「どれ?」
「このシンデレラのやつ。纏まってるし、1人の役に負担がかかるわけでもないし。
現実的に俺らでも良い劇作れそうじゃね?」

適当で不真面目に見える彼は、スラスラとそんな理由を口にした。
私は目を丸くして、台本を見つめていた。

「いいね。澪音は?何か言いかけた?」

満足そうにその意見を聞いて、そのまま私に視線を移した大輝。

「あっ、えっ……と」

なんとなく言いづらくて、言葉を濁す。
朱里と目が合って、私は彼女を見ながら口にした。

「私も、同じこと思って。それに話も感動するし、文化祭にはぴったりだと思う」

旭陽の方は見れなかった。
同じことを思っていた、なんて、胡散臭いと思われてはいないだろうか。

そんな卑屈なことを考えたって仕方ないのに、旭陽に対してだけはどうしても不安が大きくなってしまう。

「さっすがふたり!私たちもねこれいいよねーって言ってたの!じゃあ、私たちからはこの辺り提案して、あとは皆の提案も含めて次回検討しようか!」

朱里の明るい仕切りに救われて、その日は無事会議が終了した。