「ついに最後だもんね、文化祭気合い入るね!」

教室に戻ってすぐ放たれた朱里の何気ないひと言に、私は体を硬直させた。

何も言わない私に違和感を抱き、朱里が言葉を続ける。

「澪音?」
「え……?あ、そうだね……、中学最後だもんね!」

中学最後の文化祭は、私にとっては人生最期の文化祭だった。
朱里の言葉通り、気合いが入っているのは間違いない。

「私ね、今年は係やりたいんだよね」
「えー!?珍しいじゃん!やろうよ!」

昔から明るくて楽しいことが大好きな朱里。
否定されないことが嬉しくて、私はぎゅっと拳を握りしめた。

「文化祭委員、男女ふたりずつ。やってもらおうかな」

先生の提案に、少し離れた席から朱里が手を振るのが見えた。
明るい笑顔に、私の背中はトンっと押される。

「私やります!」
「……私も、やりたいです!」

真っ直ぐに挙げられた朱里の手に続き、私もきゅっと片手を伸ばした。

目が合った先生は心配そうな目をしていたけれど、朱里と微笑む私を見て、安心したように頷いた。

「じゃあ、女子は朱里と澪音でいいか?」

他に立候補はなかったため、特段否定されることも無く委員に決まり、私はほっと息を着く。

頑張ろう。絶対にいい思い出にしたい。
朱里と一緒なら頑張れそうだ。

朱里の席を見つめると、彼女もこちらを見ていて、可愛らしくピースサインとウインクが飛ばされた。